土砂災害から家や土木施設を守る地盤のプロ藤井俊逸（ふじい　しゅんいつ）株式会社藤井基礎設計事務所　代表取締役社長

土と基礎に関する設計、防災技術・地域防災への取り組み

１）道路や宅地をつくるときに、山を切りとる場所が、安全かどうかを調べます。
２）山が崩れて、家や道路が被災したとき、どうするのかをアドバイスします。
３）橋や港の重さを地盤が支えられるかを調べ、安全となる方法を考えます。
４）住んでいる場所のハザードを調べ、安全に避難する方法をアドバイスします。
５）土木を一般の人に伝えるために「ドボク模型」による普及活動をしています。
６）地域の特徴を活用できる、新技術を導入し、地域活性化を図ります。

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取材記事

会社の哲学に５つの考え

株式会社藤井基礎設計事務所（松江市東津田町）には会社の哲学として、５つの考えがあります。「いいものはいい！」「必要なものは作ろう！」「土のことはどこにも負けない！」「技術力で地域に産業を創る！」「ドボク模型で土木を知ってもらう」。

代表取締役社長の藤井俊逸さんは、自らの在るべき姿を『土砂災害から家や土木施設を守る地盤のプロフェッショナル』だと言います。発注者からの業務委託では、基準への適合を問われるケースが多いため、「技術者が基準の基となっている原理や本質を理解していなかったり、基準にないケースでは答えを引き出せないケースがあります」と指摘します。

藤井さんは、90年ごろから発注者協議や地元説明会などで、ドボク模型を使うようになりました。「模型を使うことで、基準や数式への理解が深まり、技術者として本質的な部分を知ることができ、相手により分かりやすく伝えるという力が身に付くと思います」。その成果が認められ、「13年度技術分野科学技術賞」（理解増進部門）で文部科学大臣賞を受賞しました。

また、地盤の基礎データ収集や現場の安全性確保などに向けて、関連会社と一体となって技術開発に傾注。工事現場で発生する騒音・振動の遠隔監視システム「雲太」▽地盤の変位を常時監視し、土砂災害を察知して自動警報するシステム「ＤＣのび太安全管理警報システム」▽重機向け安全管理補助器具「ばか騒ぎ」－などを開発し、しまね・ハツ・建設ブランドの登録を受けました。

上野塾での現場研修

さらに、隠岐の島町では間伐材から抽出した「リグニン」を原料に、自動車・電子部品などへの活用が期待される「リグノフェール」を製造する方法を確立。地域の新たな産業を創ろうと、実用化に向けた研究施設が今秋に稼働します。

一方、斜面防災の第一人者・上野将司さんを招く「上野塾」を毎年開催。今年は７月５～６日、同社が受注した斜面関係業務を題材に、地質・すべり機構・対策工について、活発にディスカッションしました。「一流の技術者に触れることで多くの気付きが得られます」と藤井さん。

同社では論文発表にも力を入れており、夏季研修会では社員が自由な発想で作成した論文を発表。全国地質調査業協会連合会が主催する「全地連・技術フォーラム」でもこれまで、多数の社員が論文を発表。「土のことはどこにも負けない！」の哲学を実践しようと研鑽しています。

個人プロフィール

経歴: 1979年3月　島根県立松江南高等学校　卒業
1983年3月　名古屋工業大学土木工学科　卒業
1985年3月　名古屋工業大学大学院土木工学　卒業
1985年4月　㈱藤井基礎設計事務所　入社
1989年4月　同社　基礎設計室主任
1991年4月　同社　基礎設計室室長代理
1996年4月　同社　取締役就任
2016年4月　同社　代表取締役社長就任
実績: ●研究業績●
粒状体の応力・ひずみ関係の研究　1984/4～85/3　名古屋工業大学大学院
S．P．C．ウォール工法の研究開発　2001年4月～02年6月　SPC工法研究会共同研究
島根県ボーリング情報公開システム構築2004/9～05/9　島根県土質技術研究センター
全地連新マーケット創出事業　土工工事の危険度に応じた安全管理方法の目安作成
　2008/6～09/3（社）全国地質調査業協会連合会
斜面崩壊による労働災害の防止対策に関する調査研究会報告書の作成
　2009/3～10/3　独立行政法人労働安全衛生総合研究所

●教育業績●
公益社団法人地盤工学会「模型実験入門講習会」
2012年11月20日　デモンストレーションのための模型実験
国立大学法人島根大学　教育育成科目「山陰地域の自然災害」
　2014年～19年　「災害対策とその工法」
「真夏の防災教室～めざせ防災博士」藤井先生と山崩れを楽しく学ぼう！
　2014年8月19日　日本地すべり学会・独立行政法人防災科学技術研究所
NHK_Eテレ『学ぼうBOUSAI』出演
　「土砂災害から命を守る」の先生役で登場

●業績・表彰●
土質工学セミナー報告賞　表彰業績名　模型を使った土の力学
　2008年4月24日　（社）地盤工学会中国支部
全地連「技術e-フォーラム２００８」技術発表会　優秀技術発表者賞
　論文名：手軽に穴の中を覗く技術
　2008年10月16日・17日　（社）全国地質調査業協会連合会
全地連「技術e-フォーラム２００９」技術発表会　優秀技術発表者賞
　論文名：トンネル発破振動のリアルタイム配信による工事事例
　2009年9月10日・11日　（社）全国地質調査業協会連合会
土質工学セミナー報告賞　表彰業績名　土のうの力学的効果の模型実験
　2011年4月22日　（社）地盤工学会中国支部
土質工学セミナー報告賞　2007、2010～13年　連続受賞
　公益社団法人　地盤工学会中国支部
2013年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞「理解増進部門」
　「模型実験による土木の理解増進」
　2013年4月16日　文部科学大臣表彰
日経コンストラクション2013年8月12日号　特集ドボクを元気にする12人
日経コンストラクション　市民向けPRテクを磨く「ドボク模型プレゼン講座」
　第1回～第12回まで連載（2014年1月27日号～15年7月27日号）
行動する技術者たち（行動と思考の軌跡）P142　「模型で伝える」土木の面白さ
2014年10月　発行所：公益社団法人　土木学会、発売所：丸善出版
　公益社団法人　地盤工学会ホームページ「Shunちゃんの模型実験動画」掲載
「模型で分かるドボクの秘密」DVDブック出版（2015/10/21）日経BP社
「実験で学ぶ土砂災害」出版（2015年8月）土木学会
　地盤工学委員会　斜面工学研究小委員会にて藤井が主査として作成。
日経コンストラクション　市民向けPRテクを磨く「ドボク模型プレゼン講座第2弾」
　第1回～第12回まで連載（2017年3月13日号～18年9月10日号）
土木学会「土木広報大賞2018」の準優秀賞
　「ドボク模型」により土木をわかりやすく伝える広報活動。